- この記事の要約
- この記事について
- ダイジェスト版
- Defender警告急増の裏側:Win11が始めた「古いドライバーの切り捨て」戦略
- おまけ
- Q&A- Q1. WinRing0ドライバーの警告は、Microsoftが今後も続ける「切り捨て」のサインですか?
- Q2. 企業の内製システムで警告が出ました。とりあえずDefenderの「除外」設定をすれば大丈夫ですか?
- Q3. HWiNFOなど正規のツールでも警告が出たのですが、これはマルウェアではないのですか?
- Q4. アプリを最新版にしても警告が消えません。何か他に原因がありますか?
- Q5. このブロックは、Windows 10のESU環境でも発生しますか?
- Q6. 警告を回避するために、Microsoft Defenderをオフにするのは有効な手段ですか?
- Q7. 企業の内製システムの場合、どの代替手段が最も推奨されますか?
 
この記事の要約
※ この要約はGoogle Geminiを利用して作成されました
現在アクセスが急増している「WinRing0.sys」ドライバーに関する警告について、その裏側にあるMicrosoftのセキュリティ戦略を解説します。これは古いPC環境を「切り捨てる」OS側の「セキュリティの棚卸し」であり、警告は当然の対応です。個人ユーザー向け対処法(更新/削除)に加え、企業SE向けの内製システム対応策、WinRing0.sysの恒久的な代替手段についても解説します。
スライドショー動画(約7分25秒)
GoogleノートブックLMで作成したスライドショー動画です。(日本語字幕付き)
この記事について

この記事は、一般コンシューマー向けに作成しましたが、実は内製システムや古めの業務用ソフトを利用している企業などのほうがより深刻な問題を取り扱っています。
この記事は、Windowsトラブルシューティング暦20年以上の筆者が、AI(Gemini)との協働により、セキュリティ強化の裏側にあるMicrosoftの戦略を分析・考察し、執筆しています。
本記事は、現在アクセスが急増している「WinRing0.sys」ドライバーの警告問題について、単なる対処法に留まらず、「古いPC環境を切り捨てる」というMSのセキュリティ戦略を解説するコラム記事です。
この記事とリンク先の参考記事で解説している回避策は、あくまで一時的なものです。セキュリティ上のリスクを排除するため、速やかにメーカーの対応を待つか、代替ソフトへ移行してください。
記事には、一部にGoogleGeminiで生成した画像が利用されている場合があります。AIが生成した画像には小さく「 ai 」とウオーターマークが付加されています。
ダイジェスト版
テキスト版ダイジェスト
今、「脆弱なドライバ警告」問題がGoogle検索でも大きなボリュームとなっています。この記事では、この警告が単なるアプリの不具合ではなく、Microsoftが古いPCのセキュリティを意図的に「切り捨て」始めたサインであることを解説します。
特に、内製システムや古いソフトを利用中の企業SEの皆様、そしてネットバンキングやクレジットカード決済を行う個人ユーザーにとっては、業務停止や財産の乗っ取りといった深刻なリスクが潜んでいます。本文では、その裏側にあるセキュリティ戦略と、WinRing0.sysのような脆弱なドライバーを恒久的に排除する「代替手段」を詳説。個人ユーザーが取るべき最善策(更新・削除)から、企業の予算化に必要な具体的な検証ステップまでをまとめています。
あなたのPCに潜む「裏口」を閉ざし、セキュリティレベルを維持するための必読ガイドです。
Defender警告急増の裏側:Win11が始めた「古いドライバーの切り捨て」戦略
1. なぜ今、Microsoft Defenderの警告が増えているのか?
2025/07/19に公開した【速報】Microsoft Defender、一部アプリを「脆弱なドライバ」として警告・ブロック中 – 「Winring0ドライバ」の脆弱性が原因か【2025/07/19】へのアクセスがとても増えています。
ここ数ヶ月、「Microsoft Defender」が、特定のハードウェア監視ツールやメーカー製ユーティリティに使われている「WinRing0.sys」ドライバーを「脆弱なドライバ」としてブロックする事例が急増しているためです。
そこで、この件に関する簡単な解説と、この件が物語る「MSの方針とユーザー側の対処方法」について改めて簡易に触れ直します。
なお、これはドライバーが急に悪質なものに変わったわけではなく、Windows側のセキュリティ戦略がより厳格になったことが原因です。
そしてこの「脆弱なドライバ」として警告・ブロックの裏側には、あなたの利用している古めのパーツやソフト/アプリが、ある日突然利用できなくなってしまうというかなり現実的な可能性が隠されています。
黙認されていた古いドライバーの「自動例外」が外れ始めた
古いドライバーの中には、OSの根幹にアクセスできる脆弱性(CVE-2020-14979など)を抱えているものがあり、過去のWindowsでは、特定のソフトを動かすために、セキュリティ設定の「例外リスト」に自動的に登録され、その使用が黙認されてきました。
しかし、Windows 11(特に24H2/25H2以降のアップデート)では、セキュリティサブシステムが刷新され、OSは過去に許容されていたセキュリティ的にグレーな古い例外リストを意図的に無効化し始めています。
この動きこそが、「WinRing0.sys」のような古いドライバーを Defender の「脆弱なドライバーのブロックリスト」に追加し、警告・ブロックしている根本原因です。
これは「切り捨て」であり「セキュリティ上の当然の対応」
このブロックは、PCユーザーにとっては不便かもしれませんが、セキュリティ上は当然かつ必要な措置です。Microsoftは、この警告を通じて、古いドライバースタックをPCから排除する「セキュリティの棚卸し」を全PCに対して強制的に進めていると解釈できます。
古いドライバーは、マルウェアやランサムウェアがOSの防御網をすり抜けるための「裏口」として悪用されます。この警告は、その裏口が塞がれたことを意味します。
3. 読者が取るべき対応(セキュリティ要件への適合)
警告を受け取ったということは、そのアプリが依存している古いコンポーネントが、現在のMicrosoftのセキュリティ要件に合致していないことを意味します。この問題を放置することはできません。
3.1. 【最優先】原因の特定とアプリケーションの恒久的な解決
最も安全で根本的な解決策は、脆弱性の原因そのもの(古いドライバー)をPCから排除することです。
| 対策の種類 | 実施内容 | なぜ必要か(理由) | 
|---|---|---|
| 最善策: 更新 | 警告を出しているアプリを、アプリ開発元が提供している「Windows 11 25H2対応」の最新版ドライバーやユーティリティに更新してください。 | 開発元が脆弱性のあるWinRing0.sysを、安全な新しいドライバーに置き換えている可能性が高いためです。 | 
| 次善策: 削除 | もし最新版が提供されていない、または今後も使う予定がない場合は、そのアプリを直ちにアンインストールしてください。 | 脆弱な「裏口」を閉ざし、セキュリティリスクを根本から排除するためです。 | 
3.2. 【根本対策】PC環境全体のセキュリティ棚卸し
この警告は、単なるアプリの問題ではなく、お使いのPC環境全体のセキュリティ意識を問うものです。
- 古いPCの認識変更:
 古いドライバーが許容される時代は終わりつつあります。今回の警告を機に、ご自身のPC環境全体が最新のセキュリティ要件を満たしているか、PCメーカーのサポート状況やファームウェアのバージョンも含めて確認・更新してください。
- 「切り捨て」への備え:
 Win11のセキュリティ厳格化は、今後も続きます。今回の警告でブロックされたアプリは、将来的にOS側から完全に動作が停止される可能性があることを念頭に、WinRing0.sysに依存しない代替ソフトへの乗り換えや、システム全体のアップデート計画を見直すことが重要です。
詳細は過去記事をご参照ください
この問題が具体的にどのような脆弱性によるものか、また、影響を受けるアプリケーション一覧や、詳細な対策手順については、以下の元記事で解説しています。
おまけ
企業のSEの方などへの内製のシステムやソフト・アプリなどを利用している場合の対処を、簡単にですがまとめてみました。
ご存知のことばかりかもしれませんが、頭の中の整理に利用していただけると幸いです。
内製のシステムやソフト・アプリなどを利用している場合の対処
今回のMicrosoft Defenderによる「脆弱なドライバーのブロック」は、個人PCユーザーだけの問題ではありません。特に企業環境で運用されている内製のシステムや、長年利用している古い業務アプリケーションは、「セキュリティの棚卸し」の最大のターゲットとなり得ます。
取るべき緊急の対応ステップ
- 依存関係の緊急洗い出し:
 社内ネットワーク内のPCで使用されているすべての内製/古い業務システムについて、今回の警告対象となった「WinRing0.sys」や、同様にカーネルにアクセスする署名が古い/脆弱なコンポーネントを使用していないか、緊急でソースコードや依存ファイルを洗い出してください。
- Win11 (25H2) 環境での検証:
 すぐにWin11 (25H2) の検証用PCを用意し、当該システムが正常に動作するか、特にDefenderの警告が出ないかを検証してください。警告が出る場合は、OS側でブロックされることを前提とした対策が必要です
- 恒久的な対策の確立(代替手段の準備):
 警告が出た場合、以下のいずれかの対策を講じる必要があります。- ① コードのアップデート: 脆弱性のない最新のコンポーネント(WinRing0ドライバの最新版、または代替のカーネルアクセス手法)に書き換える。
- ② 環境の分離:Win11環境での実行が不可能な場合は、仮想化(VDI)やリモートデスクトップを利用し、古いOS環境で業務を継続する手段を用意する。
- ③ 例外設定の検討(最終手段):どうしても対応が間に合わない場合のみ、IT管理下でDefenderの除外設定を一時的に行うことを検討します。ただし、これはセキュリティホールを意図的に開ける行為であり、最も推奨されません。
 
More:WinRing0.sysの主な代替手段
最も一般的な代替手段は、アプリケーションの目的によって異なりますが、以下の3つに集約されます。
1. 独自開発のカーネルドライバ(最も一般的)
概要: 脆弱性を持つWinRing0.sysに依存するのをやめ、アプリケーション開発元が、セキュリティ審査が通るように設計された独自のカーネルドライバ(署名付き)を開発し、それに置き換える方法です。
事例: 有名なハードウェア監視ツールである HWiNFO は、この問題に対応するために、バージョン7.00以降でWinRing0.sysへの依存を止め、独自のドライバを使用するように変更しています。多くのメジャーなメーカー系ツールも、この独自ドライバ方式に切り替えています。
2. WinRing0.sysの修正版ドライバの使用
概要: WinRing0.sysのコア技術自体を利用しつつ、コミュニティや後継者が脆弱性(CVE-2020-14979)を修正した新しいバージョン(通常はバージョン1.3.0以降)を使用する方法です。
注意点: アプリケーション側が、この新しい修正版ドライバを参照するように更新されている必要があります。古いアプリは、古いバージョンのドライバを強制的にインストールしようとするため、問題が解決しません。
3. OS標準APIへの切り替え
概要: ハードウェアに直接アクセスするのではなく、Windows OSが提供する公式のAPI(Application Programming Interface)を通じて情報を取得するように、アプリケーションのコードを書き換える方法です。
メリット: OSの仕様変更やセキュリティ強化の影響を受けにくくなります。
デメリット: OSのAPI経由では、WinRing0.sysが提供していたような非常に低レベルなハードウェア制御(例:特定のレジスタの直接読み書き)は難しくなります。
結論
企業のSEの方が内製システムを対応させる場合、「独自ドライバへの切り替え」または「OS標準APIへのコードの書き換え」が恒久的な解決策となります。
今回のMSの処理で警告を受け取ったアプリケーションの多くは、既に上記の「独自開発のカーネルドライバ」に移行することで対応を完了させている状態です。
自社内製の場合(外注を含む)では、予算等も必要になってくるとは思いますが「ある日突然」という事態を避けるには必要不可欠ということは言うまでもなくご承知でしょう。
予算化、大変でしょうがご尽力ください。
Q&A
Q1. WinRing0ドライバーの警告は、Microsoftが今後も続ける「切り捨て」のサインですか?
A. はい、その可能性が極めて高いです。今回の措置は、Windows 11のセキュリティサブシステムが「過去に許容していた古いコンポーネント」を意図的に排除し、システムの安全性を最優先する方針に切り替わったことを示唆しています。今後も、OSの安定稼働に直接影響しないがセキュリティリスクとなる古いドライバーは、同様にブロックされていくと予測されます。
Q2. 企業の内製システムで警告が出ました。とりあえずDefenderの「除外」設定をすれば大丈夫ですか?
A. いいえ、「とりあえず除外」は非常に危険です。除外設定は、セキュリティの裏口を意図的に開けたままにする行為です。内製システムであれば、脆弱なドライバーが原因で業務システムがハッキングされるリスクを負うことになります。緊急の回避策として最小限の期間に留め、その間に代替ドライバーへのコードアップデートや、Win11非対応環境でのVDI(仮想デスクトップ)への移行といった恒久的な対策を確立してください。
Q3. HWiNFOなど正規のツールでも警告が出たのですが、これはマルウェアではないのですか?
A. HWiNFOなどのアプリケーション自体はマルウェアではありません。問題は、それらのアプリが使用している「WinRing0.sys」という部品(ドライバー)が、脆弱性を持っていることです。この脆弱性が悪用されるのを防ぐために、Microsoft Defenderが警告を出してアプリの実行をブロックしています。アプリの最新版にアップデートすれば、安全な代替ドライバーに切り替わり、警告は解消されます。
Q4. アプリを最新版にしても警告が消えません。何か他に原因がありますか?
A. 警告が続く場合、以下の原因が考えられます。1. アンインストールが不完全: 古いバージョンのドライバーファイル(WinRing0.sys)がPC内に残骸として残っている。2. ベンダーの対応遅れ: アプリケーション開発元が「最新版」と謳っていても、まだ脆弱性のあるドライバーを同梱している可能性がある。一度、Defenderの警告対象となっているファイル自体を特定し、手動で削除することを試みる必要があります。
Q5. このブロックは、Windows 10のESU環境でも発生しますか?
A. 発生する可能性は非常に高いです。 Win10のESU(拡張セキュリティ更新プログラム)はセキュリティ修正がメインであり、Defenderの定義ファイルの更新はESU環境にも適用されます。このドライバーブロック機能はOSのバージョンによらず適用されるため、脆弱なドライバーを使用している限り、Win10 ESU環境でも警告を受けブロックされます。
Q6. 警告を回避するために、Microsoft Defenderをオフにするのは有効な手段ですか?
A. 絶対に推奨しません。 Defenderをオフにすれば警告は出なくなりますが、PCのセキュリティ防御の最前線となる機能が無効になり、マルウェアやランサムウェアの攻撃に対して無防備になります。WinRing0.sysの脆弱性が悪用された場合、PCは深刻なダメージを受けるため、Defenderを無効化するよりも、原因であるアプリケーションを削除・更新する方がはるかに安全です。
Q7. 企業の内製システムの場合、どの代替手段が最も推奨されますか?
A. 「独自開発のカーネルドライバへの切り替え」または「OS標準APIへのコードの書き換え」が最も推奨されます。WinRing0.sysは古い技術であり、将来のWindowsでも問題を起こす可能性が高いためです。特に内製システムの場合、一時的な回避策(除外設定)ではなく、開発予算を確保してセキュリティリスクを根本から取り除くことが、業務継続性の観点から不可欠です。
記事中の専門用語の解説
- WinRing0.sys ドライバー
- ハードウェア監視ツール(HWiNFO、MSI Afterburnerなど)で広く使われていた、PCの根幹(カーネル)へ直接アクセスするための古いドライバーファイル。脆弱性(CVE-2020-14979)を抱えているため、Microsoft Defenderのブロック対象となりました。
 
- カーネル(Kernel)アクセス
- OSの最も深い部分(核)にアクセスし、CPUやメモリなどのハードウェアを直接制御すること。この権限を不正に奪われると、システム全体が乗っ取られるため、Windowsはカーネルへのアクセスを厳しく管理しています。
 
- セキュリティの棚卸し
- (本記事での造語)Microsoftが、OSのセキュリティレベルを上げるために、過去に許容されていた脆弱なドライバーやコンポーネントの例外リストを整理し、利用を強制的に停止させる戦略的な措置のこと。
 
- 独自開発のカーネルドライバ
- WinRing0.sysの代替として、ソフトウェア開発元が脆弱性のないように独自に設計し、セキュリティ審査を通過させた新しいドライバーのこと。多くの正規アプリが、この独自ドライバ方式に切り替えることで警告を解消しています。
 
- VDI(Virtual Desktop Infrastructure)
- 仮想デスクトップインフラストラクチャのこと。サーバー上でWindowsのデスクトップ環境を仮想化し、クライアントPCからリモート操作で利用するシステム。内製システムなど、古い業務アプリをWin11 PCで動かせない場合の「環境分離」の代替策として利用されます。
 
付録:具体的シナリオ例:WinRing0などの極く強い権限における脆弱性悪用による被害
このWinRing0.sysの脆弱性(最高権限の不正奪取)は、単に「アプリが動かない」という不便さに留まらず、あなたのPCと財産に直接関わる深刻な脅威です。特にセキュリティ対策が甘くなりがちな環境では、以下のシナリオが現実のものとなります。
1. ネットバンキング乗っ取り・情報窃盗の危険性
【シナリオ】同じPCで業務とネットバンキング操作やクレジットカードでの決済を行う場合
- 脆弱性の悪用: 悪意のあるマルウェアが、WinRing0.sysの脆弱性を利用して、OSの最上位権限(カーネルモード/SYSTEM権限)を不正に奪い取ります。
- Defenderの無力化: 最高権限を得たマルウェアは、Microsoft Defenderや他のセキュリティソフトの監視を潜り抜け、それらの機能を停止させることが可能になります。
- 具体的な被害:
- セッション乗っ取り: ユーザーがネットバンキングや証券口座にログインした際、マルウェアがセッションを乗っ取り、取引内容の書き換えや送金先変更を行います。
- キーロガー:入力内容をすべて盗聴され、パスワードや機密情報が流出します。
 
2. ランサムウェア感染とシステム破壊
【シナリオ】システム全体のロックダウン
- ランサムウェアの権限昇格: ランサムウェアがこの脆弱性を利用して、ファイルシステム自体を操作できる最高権限を得ます。
-  深刻な被害:
- シャドウコピーの破壊: OSの回復機能であるシャドウコピー(バックアップ)を破壊し、データの復元を不可能にします。
- システムドライブの暗号化: Cドライブを含むPC全体のファイルを暗号化し、身代金を要求されます。最高権限で動作するため、通常のセキュリティソフトでは止められません。
 
3. サポート切れソフトとの複合的な脅威【最重要】
WinRing0.sysの問題は、サポート切れのソフトウェアの脆弱性と組み合わせることで、最も危険な脅威となります。これは、多くの企業や個人が「まだ使えるから」と使い続けているOffice製品などで発生しやすい複合攻撃です。
【シナリオ】サポート切れOfficeを通じた複合攻撃
- 脆弱な侵入口(例: Office): サポートが終了した Officeスイート(例:Office 2010以前、または古いバージョン)は、新種のファイル脆弱性やマクロの脆弱性が修正されないまま放置されています。
- 権限昇格(WinRing0.sys): ユーザーが悪意のあるWordやExcelファイルを開くことで、そのOfficeの脆弱性を利用してマルウェアが侵入し、直後にWinRing0.sysの脆弱性を利用して最高権限(カーネルモード)を奪い取ります。
- セキュリティの無力化: 最高権限を得たマルウェアは、Microsoft Defenderを含むすべてのセキュリティ防御を無力化し、機密データやネットバンキングの情報窃盗を自由に行えるようになります。
4. 企業のセキュリティポリシー崩壊
WinRing0.sysの問題は、PCが古いコンポーネントを許容していることの証拠です。このドライバーを許容し続けることは、企業のセキュリティポリシー全体を崩壊させるリスクがあります。
- セキュリティ対策の導入や、Win11への移行を進めている企業にとって、この脆弱性は「セキュリティ対策に穴が開いている」状態を意味します。
- 早急にドライバーを更新するか、該当アプリをアンインストールし、セキュリティの穴を恒久的に閉じることが、企業の責務です。
5.もうすでに実際の攻撃に悪用されています
情報身代金請求(ランサムウェア)においては、WinRing0.sysのような脆弱なドライバを悪用した攻撃は、もう既に現実の脅威として数年前から実際に行われています。
既に確認されている攻撃の事実
ランサムウェアでの利用:
悪質なハッカー集団は、ランサムウェアを配布する際、OSの防御機能を無効化するために、既知の脆弱性を持つ署名付きドライバー(Bring Your Own Vulnerable Driver: BYOVD攻撃)を悪用します。WinRing0.sysは、そのBYOVD攻撃のターゲットの一つです。
Microsoftの警告の背景:
Microsoft Defenderが今回ブロックに踏み切った背景には、このWinRing0.sysの脆弱性を悪用したランサムウェアやマルウェアの活動が増加し、被害が拡大しているという事実があります。ブロックリストへの追加は、被害が確認されたことへの「後追い対策」であると言えます。
攻撃の目的:
攻撃者は、システムに侵入した後、ランサムウェアを配布するだけでなく、企業の重要データを盗み出し、「データを公開しない代わりに金銭を要求する(情報身代金請求)」という二重脅迫の手法を多用しています。
この「既に実際に行われている」という事実は、緊急性と対応の実行の必要を裏付ける何よりの証拠です。
6.更に:PCメーカーなどが提供する総合ユーティリティーソフトなど
これは非常にありがちかつ普段は目に見える悪さをすることも少ないので見落としがちですが、PCメーカーなどが提供する総合ユーティリティーソフトや、マザーボード・グラフィックボードメーカーの提供するハードウェア制御ツール(例:ファン制御、オーバークロック、診断ツールなど)は、非常に高い、上位の権限を有しています。
これらは、今回の「WinRing0.sys」の問題と同様に、セキュリティ上の重大なリスクとなりえます。
また、同じものを利用しているPC台数も多いですし、放置されている可能性も非常に高いことから、(もうすでに悪用されているのかもしれませんが)いつターゲットになってもおかしくありませんので即時の対処を強くおすすめします。
権限が高い理由とそのリスク
これらのユーティリティソフトが上位の権限を持つのは、以下の理由からです。
1. カーネルモードドライバーの利用(最高権限)
- 権限レベル: これらのソフトの多くは、単なるアプリケーション(ユーザーモード)として動作するだけでなく、ハードウェアを直接制御するためにカーネルモードドライバーを利用しています。
- リスク: カーネルモードはOSの心臓部であり、ここにコードを送り込むということは、OSの最高権限(NT AUTHORITY\SYSTEM)を持つことを意味します。悪意のあるプログラムがこのドライバーの脆弱性を利用すれば、セキュリティソフト(Microsoft Defenderなど)を停止させることも可能です。
2. システムの深い部分へのアクセス
- 目的: 以下の機能を実現するために、OSの深い部分にアクセスする必要があります。
- ファン制御・温度監視: CPUやGPUの動作状況や温度を監視し、ファンの回転数をリアルタイムで調整するため。
- BIOS/UEFI設定の変更: OS上からBIOS設定の一部を書き換えるため。
- システム診断: ハードウェアの健康状態をチェックするため。
 
- 結果: サポートが終了したソフトがこれらの上位権限ドライバーを搭載したままだと、そのドライバーに脆弱性が見つかってもメーカーから修正パッチが提供されないため、PCは恒久的なセキュリティリスクを抱えることになります。
まとめ
WinRing0.sysの問題は、まさにこれらの「カーネルモードで動作するサードパーティ製ドライバ」のセキュリティ棚卸しの一環です。
メーカー製の総合ユーティリティソフトは非常に便利ですが、サポートが切れたものや、OSバージョン(Windows 11 25H2など)に対応していない古いバージョンは、即座にアンインストールするか、最新版に更新することが、セキュリティを保つ上での鉄則となります。
最後に:セキュリティの「切り捨て時代」に備えましょう
記事を最後までお読みくださり、本当にありがとうございました。
この記事を読むことで、現在体験しているDefenderの警告が、単なるアプリの不具合ではなく、「古いPC環境とソフトウェアに対するMSのセキュリティ戦略的な警告」であることをご理解いただけたかと思います。警告に適切に対応することは、脆弱な裏口を塞ぎ、PCを守ることに直結します。
「切り捨て」を乗り越え、安定運用を続けるために
今回の警告は、今まで後方互換性維持のために躊躇していた部分を含めてWindows 11が古いものとの決別を始めたサインです。この厳しい現実を乗り越え、安全にPCを使い続けるために、計画を立てて行動しましょう。
具体的な「次のステップ」
- 【最優先】アプリのアップデート実行: 警告を出しているアプリケーション(HWiNFOなど)を、まず最新版にアップデートし、警告が消えるか確認してください。これが最も早い解決策です。
- 【継続的な備え】環境の棚卸し: PCメーカーのサポートサイトを確認し、お使いのPCのファームウェア(BIOS)やチップセットドライバーが最新のWin11 25H2に対応しているか検証してください。
- 【企業向け】代替手段の予算化: 内製システムを運用している場合は、WinRing0.sysに依存しない「独自ドライバーへの切り替え」または「VDI環境への移行」を念頭に、必要な予算化と計画を直ちに進めてください。
セキュリティの鉄則は「油断しないこと」です。この記事で得た知識と、少しの行動力があれば、あなたはPCを安全に守り続けることができます。もしこの記事が、同じように困っている同僚や知人の助けになると思われたら、ぜひSNSなどで共有してください。皆さまの知恵がコミュニティー全体の安全向上に繋がります。
今回の記事は以上となります。
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